英語授業のアイディア Ideas for TEFL Classes

 いつも「生徒がスムーズに授業に入れる導入はどうすればいいんだろう?」とか「不定詞はどうやって教えればいいんだろう?」とか悩んでいました。いきおい、「英語授業を楽しくする67のアイディア」などのハウツー(how to)本を読みあさっていたものです。

 私が今までやってみて、「結構うまくいったな」と思える実践例(ヒント)をいくつか紹介します。もちろん、この何万倍ものテクニックがあると思いますが、自分でやってみた(みている)ものだけを掲載しています。過去にいろんな本で読み、真似することによって得た実践も含まれます。


■文字と音を結びつける工夫

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フォニックスかるた

 厚めのマット紙を準備し、インクジェットプリンタでフォニックスかるたを印字し、切り離しておく(読み札3枚、取り札は3枚×グループ数)。

 児童生徒をグループに分け、円座か机を合わせさせ、取り札を配置させる。読み札の指示に従って教師が(sなら「スー」と、ALTにやってもらえば完璧!)発音し、児童生徒が素早く拾う。読んだ読み札を児童生徒に見せ、正しい札を取ったか確認させる。

 読み札を2セット以上作って教室に置けば、昼休みや放課後に児童生徒同士でも遊べる。

 英語の単語が読み書きできるためには、ローマ字またはフォニックスからのアプローチが考えられる。しかしここ数年間、小学校ではローマ字を小学校3年生時に数時間学習するだけであり、ローマ字はほとんど身についていない生徒が多い。そこで、遊びながら文字と音のつながりを身につける方法として、かるたを考えてみた。

 中1前半まではアルファベットにブロック体を使用し、活字体は避けたい。左に紹介した書類ではブロック体のフォントとしてMac用のChalkboardを使用しているが、Comic SansにすればWindowsでも作成可能である(大文字のYだけは別のフォントにする)。

■音声機器の活用 Updated!

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iPodと拡声装置の活用

 教科書の音声教材CDをiPodに全部取り込んでしまう。CD1枚1枚をiTunesのプレイリストとして分類すれば、トラック番号が自動で記録されるのですぐに使える。これを、AUX端子がついたラジカセ(私は東芝のTY-CDK5を購入...出力5Wで十分、コンセントを抜いても以前の音量を記憶、付属リモコンで教室の後でも音量が変えられる、電池駆動も可能)等の外部入力(AUX)端子に3.5mmステレオプラグで出力する。パソコン用のスピーカーも手軽でいいが、意外に出力が小さいものが多いので購入時に注意。

 近年安価になっているBluetooth経由の外部スピーカーは、持ち運びも便利であり、ケーブルがないので足で引っかけて机から落下したりする心配もない。私はSONYのワイヤレスポータブルスピーカーSRS-XB22を使用している。

 気になるのは著作権法(該当部分は次のリンクのQ2に対する回答A2)だが、自分の学校でオリジナルCDが購入されていて、iPodに複製したものを授業で使う分については問題ないものと思われる。

 教科書の音声教材としてCDを使う場合、各学年教科書1冊分が10〜12枚ものCDに収められている。新しいCDに移り変わる際、よく前のままのCDを教室に持参してしまい、取り替えるために職員室に走ることも少なくない。

 複数学年を教えている場合は、さらに便利である。

 iPod touch(iPhone、iPad)であれば、液晶画面を見ながらトラックの頭出しができるし、ある部分だけを繰り返したい場合でも、任意のところまで移動できる。

■授業始めのあいさつ

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教室に入る際には

 教師が教室に入室する際、笑顔で元気に"Hello!"などと言いながらニコニコして入室する。

 当然、生徒には"Hello."などと返すよう勧める。

 helloは2音節であるが、気分によって前の音節や後ろの音節にアクセントを置き分けたり、"Hello, hello, hello!"と陽気に声をかけながら入室したりしたい。

 英語好きな生徒を増やすため、英語教師は常に明るく元気でありたい。

 教室に入る前には、滑舌をよくするために口を大きく開けたり閉めたりするほか、気が滅入るようなクラスに入る前には、満面の笑顔を練習する習慣も大切。

いろいろなあいさつ

 2言目にはいつもHow are you?だけではなく、バリエーションを取り入れる。

 (例) How are you doing today? How's everything? How's it going? What's up?(答えは一般的にNot much.)

 あいさつはどうしても固定的になりがち。ワンパターンに安心させてはいけない。

 将来のALTにいろいろなあいさつをされたときでも、対応可能にしておきたい。

■英会話 Updated!

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Small Talk

 授業の始めに、あらかじめ準備した質問集(例えばこちらこちら)から1問ずつ、2〜3人の生徒に質問して答えさせる。

 慣れてきたら、追加の質問(What time did you get up this morning?と聞いて、生徒がI got up at six.と答えたら、Why so early?と聞き、生徒がBecause....で答えるなど)も行う。

 もっと慣れてきたら、英検3級2次試験のようにPlease tell me more. / Please add some more information. と付け加えて、理由やその後の様子などについて、2文以上で言わせるようにしたい。

 英語を学びたい最大の理由として「外国人とペラペラ話せるようになりたい」と答える生徒は多い。

 生徒の日常の様子や考え方の把握もできる。就寝・起床時刻や家庭学習時間などを聞いて、ちゃっかり日常生活調査も可能。英語モードだと、生徒はごまかす余裕がないため、意外と本音が聞ける。ただし、家族構成など注意を要する質問もある(父親のいない生徒にHow old is your father?と聞いてしまう等)。

 授業の始めに、生徒の頭を英語モードに切り替えやすい。

生徒が尋ねるSmall Talk

 Small Talkの活動の中で、教師が質問し、それに答えた生徒が、逆に教師に同じ質問を聞き返す。

 T: What time did you get up this morning?
 S: I got up at six thirty.
  What time did YOU get up this morning?
 T: Well, in fact, I got up at seven thirty.
  I overslept!

 常に教師が質問し、生徒が答えるだけの活動では、「君はどうなの?」というように会話がうまく転がっていく力がつかない。

 いきなり質問されると教師の方もどぎまぎしてしまうかもしれないが、ここらへんで教師の本当の英会話力を見せておきたいもの。

少人数学級でのSmall Talk 

 生徒数が1名〜数名といった少人数学級においては、教師やALTまでを巻き込んで、全員でチェーンのように質問と応答を繰り返す。

 T: What were you doing at 8 p.m. last night?
 S1: I was watching TV. (S2に)What were you doing at 8 p.m. last night?
 S2: I was studying math. (S3に)What were...?
 S3: I was taking a bath. (Tに)What were...?
 T: Oh, I was already drinking beer.

 少ない人数の学級では、昨日の生活、週末の予定など話題がワンパターンになりがちであるが、チェーンのように問答を行うと、いい意味での緊張感が生まれる。

 授業のたびに回転の向きを変えるなどして、質問者と回答者が常に変化するようにすると、ますます緊張感が高まる。

書く活動を取り入れたSmall Talk

 Small Talkで4〜5問を3〜4人ずつに質問した後、Now, please prepare your notebooks and write down my questions.と宣言し、1つの質問を5回ぐらい繰り返し、生徒に質問を書き取らせる。

 1回目はノーマルスピード、2回目はゆっくり、3回目は単語ごとに区切って、4回目は単語ごとゆっくり、5回目はノーマルスピードのようにすると、下位の生徒もやる気を出す。

 Now, let's check.と言って、質問した文を板書し、生徒に自己添削させる。

 Now, please write YOUR answers.と言って、自分なりの回答をノートに書かせる。

 自分の回答を書き終えた上位の生徒には、Please add some more information.と言って、理由や具体例など、付け足しの情報を書かせる。

 教師は机間巡視をして、必要に応じて支援する。

 ほぼ全員が書き終わってもまだ時間があれば、口頭で質問して生徒に答えさせる。

 過去の同僚であり、中1で現在完了などを使いこなせる指導をしていた高橋公子先生の手法をいただいたもの。彼女の教え子には、(今では普通になってしまったが)数十年前にもかかわらず中3で英検準2級に合格した者が結構いた事実がある。

 かなり時間はかかるが、生徒の書く力をつける活動であり、生徒は自分が言いたいことを伸び伸び表現する時間が得られ、教師にとっては生徒の書く力のチェックに絶好の機会となる。

 タブレット端末で使いたい日本語を英語にすることもできるが、翻訳サイトの英訳を信じ込むのには気をつけさせる。

 4〜5回分を書けるワークシートを準備し、1回ごとに回収すれば、生徒の書く力を確実にチェックでき、コメントを返すことも可能になる。

 はっきり言って時間はかかるため、毎時間これをやっていると教科書の進度があやしくなる。

「はい」の意味のNo. / 「いいえ」の意味のYes.

 例えば、Do you like carrots?とたずね、生徒が迷っているときに決断をうながす補助発問、No?(またはYou don't like carrots?)に対して、「はい(=ニンジンは嫌い)」という意味でYes.と答えることがある。

 このとき教師は、英語では"No.(=I don't like carrots.)"と答えるのだということを教える。逆に、「いいえ(=ニンジンは好きです)」"Yes.(=I do like carrots.)"(語尾を少し上げ気味に)と言う。

 はっきりした否定疑問文は中学校の文法的な守備範囲ではないが、常に「相手の意見に対して、合っていればYes.、違っていればNo.」と答えがちな日本人であるが故に、外国人を混乱させやすい。

 はじめは教える側も混乱しがちだが、思考が柔軟な中学生のうちに、(Do you like English?に即答しない場合などに) No?といった補助発問を何度もやって慣れさせたい。

■単語 Updated!

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日本語にない音の発音の指導

 'r'の唇を丸めて巻き舌にする様子、'l'の側音化(上の前歯の付け根に下をつける様子)、'th'の上下の歯の間に舌をのぞかせる様子などは、口でやってみせるよりも両手で歯や唇、舌の様子を模してみせる。

 例えばmanの'a'の発音に見られる[a+e]の音を発音させる際、「はっきりマン」→「はっきりメン」→「マンとメンの中間のman」と導いてあげる。

 大きな教室では、すべての生徒に口を見せるのも至難の業。手は口よりサイズが大きいので、見やすい。コロナ感染症対策にも役立つ(?)。

 [a+e]の発音は初級のうちに身につけさせたい。指導者がうまく発音できない場合でも、こうすれば教えられる。

新出単語の周辺情報

 新出単語導入の際、関連する話題を付け加える。例えば、finger導入の際にはthumb, index, middle finger, ring finger, pinky/little fingerという英語の呼び名を教える。

 月の名前の導入時には、JanuaryからJuneまではギリシャ神話の神様の名前、SeptemberからDecemberはラテン語の7から10から派生し、そこにJulius CaesarとAugustusが自分の名前を月の名前にしたこと、更には日本にも睦月〜師走までの特殊な月の呼び方があることなどを説明する。

 Tシャツはその形から名付けられたが、Yシャツはwhite shirtが日本語で発音が変化したものであることなどを話して聞かせる、などなど...。

 ややもすると単調になって記憶に残りにくい単語、いろいろな逸話や歴史を織り交ぜることにより、印象を強くしたり、似たようなものやグループ化するべきものをまとめて教えたりすることができる。

 話題については、常にいろいろな書籍から情報を取り入れるよう努力すると共に、TTの際などに時々ALTのチェックを受け、記憶違いを防止したり、情報のアップデートを図りたい。

新出単語導入時のフォニックス活用

 フラッシュカードで新出単語を生徒に発音練習をさせる際、"Can you read this?"と問いかける。

 読めない場合、例えばcatであれば、"C says?"と教師が問いかければ、生徒は「ク、ク」とフォニックスの通り発音する。

 生徒の「読んでみよう」というチャレンジ精神に訴える。

 1年生の1学期から始めて1年間ぐらいは継続し、音と文字とを結びつけさせたい。

誘導発音

 フラッシュカードを使って、教師の後についてスピーディに発音練習させるとき、10語に1語ぐらいはウソの発音をする(例えば、catを見せて"dog"と発音)。生徒がつられて発音したとき、「なにだまされてるかなあ?」とつっこむ。  生徒のオウム返し発音防止。単語の文字を集中して見るようになる。生徒はだまされまいと頑張り、教室の雰囲気も明るくなる。

家庭学習での単語暗記

 単語カード(リングでつながっているもの)は、作成する手間はかかるが、覚えた単語をはずしていく楽しみがある。

 ノート1ページを4列ぐらいに分け、一番左の列に覚えたい単語を書き出し、それを見ながら和訳を書く。これを続けて日→英→日→英・・・と何往復かしているうちにわからない単語が減っていく。

 「同じ単語を10回書いてくること」などという単調で効果の上がりにくい暗記方法に比べ、努力の効果が目に見えてわかる。

有声音・無声音

 複数や三人称単数現在のときに単語の後ろにつく's'の発音の仕方([s] [z] [iz] [ts]など)を教える際には、生徒にのどに指を当てさせる。

 's'をつける単語の語尾を延ばし、「pencil[pensl:]には[z:]がつくよ」、「desk[desk:]には[s:]がつくよ」のように一つ一つ発音し、生徒にまねをさせ、のどの振動を(または震えていないことを)実感させる。

 watchなどのときは「聞き取りにくいから[iz]のように発音して聞き取りやすくする」、「catなどのときは[t][s]「トゥス」と分けるとかっこわるい」などと説明する。

 「有声音」「無声音」の意味やちがいを、物理的振動として体感させるとわかりやすい。

 動詞の過去形の発音([d] [t] [id])の時も同様に教えられる。「sのときもやったよね」と一言付け加えれば、さらに効果的。

発音記号(IPA)の指導

 大文字・小文字がそろそろ定着すると思われる1学年秋以降、プリント等を利用し、1時間かけて発音記号を指導する。

 実際には、教科書の新出単語に発音記号が登場する2学年以降になろうが、発音記号としての新しい文字は10個ぐらいしかないので、指導はそれほど困難ではない。

 きちんと身に付いてしまえば、初めて見る単語であっても、発音記号さえあれば正確に発音することができる。

 フォニックスがカバーしきれないルール違反の単語発音にも、完璧に対処できる。

■基本文・語順

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語順定着の班活動

 定着させたいと思われる比較的長めの英文を10文ほど用意し、1行が用紙の余白いっぱいになるような大きめの文字で印字し、B4かA3ぐらいに拡大コピーする。

 1行(1文)ごとのスリップに切り離し、それぞれのスリップを4〜5ぐらいに(例えば、間接疑問のDo you know how many dogs I have?なら、Do you/know/how many/dogs I/have?のように)切り離す。

 1文ごとの紙片を1〜10までの番号をつけた封筒に入れて、教卓に並べる。同時に、黒板にマトリックスを描き、縦に班の番号、横に英文の数字を記入する。

 生徒を班体制にし、各班の代表生徒に封筒を1つずつ持ち帰らせ、班員全員で正しい語順になるように並べ替え、代表生徒がその英文を暗記して教師に口頭で伝える。教師が"That's right!"と言ったら、その生徒が適切なマトリックスの中に(3班が6番の英文だったら3行目の6列目に)○を描いて、別の封筒と交換する。

 制限時間(5〜8分ぐらい?)内に、いくつ○がつくかを競う活動。

 過去の外国人指導員から教わった活動で、生徒の班員全員で制限時間内に単語を並べ替えるというゲーム的要素があり、生徒は大変積極的に取り組む。

 ALTとのティームティーチングならALTと審査を手分けするとスムーズである。

 間接疑問文・関係代名詞等、特に難しい英文を扱う際は、「私が何匹の犬を飼ってるか知ってる?」など、日本語訳をつけることもある。

 これまでの作品例は以下の通り。

1年の文法まとめ 2年文法のまとめ

受動態・現在完了 間接疑問

後置修飾 関係代名詞

パタンプラクティス

 基本文の口頭練習を十分させた後、基本文を黒板に書き、「主語、動詞、目的語、前置詞句」を縦の直線で区切る。

 その後、例えば基本文がI went to Tokyo with my friend last year.であれば、「京都に行ったと言うときは? ニューヨークに行ったと言うときは?」という日本語のcueにより、Tokyoの下にKyoto, New Yorkと書き加え、置き換えた英文を言わせる。

 この英文の場合、IをWeやMy sisterなどに、my friendをmy familyやLucyなどに、last yearをa week agoやlast summerなどに、それぞれ置き換えることが考えられる。

 「基本文が身に付けば、単語を置き換えるだけでいろんな英文を作れる」という事実を実感させる練習。

 Cueは日本語で、しかも単語ではなく「〜と言うときは?」のように与え、実際の発話のためのバーチャル体験をさせたい。

語順の説明の一工夫

 「主語、動詞、目的語、その他の情報」などという説明では食いついてこない生徒がいるとき、「誰が、なにする、なになにを、所ジョージ」と説明すると、生徒は一瞬ピクッと反応する。

 「所ジョージ」とは、英文の後の方につく「場(at homeなど)、態(with my motherなど)、間(yesterdayなど)」要素の3つを省略したものである。

 おふざけのような説明だが、結構インパクトがあって生徒の記憶には残りやすい(ような気がする)。

 英作文の時にも、実際に生徒に「だれがぁ(主語を書いているとき)、なにするぅ「(動詞を書いているとき)....」のようにつぶやかせながら書かせると効果的。

 なお、後ろの方の語順は常に「場所、状態、時間」のようになるとは限らないことも付け加えたい。

「疑問文はすべて逆立ち」

 すべてのbe動詞、canなど助動詞が使われている英文は、疑問文にするときには、それらが主語の前に移動する。それなのに、一般動詞のみの英文では、文頭にdo/does/didが置かれる。

 一般動詞のみの英文でも、疑問文にするとdo/does/didが文頭に移動するという説明ができる。I (do) like apples.のように「likeの前に見えないdoが隠れていて、疑問文になるとdoが見えるようになって文頭に移動する」と説明するのである。三単現の場合には、He (does) like apples.のdoes+likeがlikesになるのだと説明する。

 これにより、全ての英文において「述語部分が2語以上になっている場合、疑問文は1語目が主語の前に移動する」と説明できる。

 1年生にとって、be動詞と一般動詞の疑問文(・否定文)の作り方は理解するのが困難である場合が多い。

 実際、(強調する目的ではあるが)I do like apples.(はっきり言って、僕はリンゴが好きなんだ!)といった英文は存在する。

 「述語部分が2語以上になっている場合、疑問文は1語目が主語の前に移動する」というルールは、進行形、受動態、現在完了など、多くの場合に適用できる便利なルールである。

■音読 Updated!

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姿勢

 座ったままで音読練習させる前には、教科書は持たせ、背筋を伸ばさせる。そうでなければ立たせる。  正しい姿勢で音読させることは、「よーし、読むぞー」という心構えをさせ、腹式呼吸で行うので発音そのものの質も向上する。

単語読み(一語読み)

 生徒に教科書本文を見せながら、教師が単語1つ1つを発音、生徒は繰り返す作業を2回ずつ行う。T: desk→S: desk→T: desk→S: deskのように。  音と文字が一致していない段階の生徒(特に1年生)にカナ振りの猶予時間を与えるのに効果的。

フレーズ読み

 意味のまとまりごとに区切って教師が日本語の意味を言ってから英語で発音し、生徒が繰り返す。

 I went to Tokyo with my friend last year.であれば、「私は」I→「東京に行きました」went to Tokyo→「友だちと」with my friend→「去年」last year.のように言って、生徒に繰り返させる。

 日本語訳を与えることによって、センスグループを意識させながら音読練習させることが可能。

 ワードリンキング(went toの1つ目のtは発音しないなど)の指導もここでできる。

Read and Look up

 比較的長い英文の音読練習の時、1文読みの後に行う。教師が1文を読み、生徒は繰り返す(教科書を見たまま)。教師が"Again."と言うと生徒はまた繰り返す。何度か"Again."を繰り返すうちに大体全員が言えるようになったら、教師が"Look up."と合図し、生徒は顔を上げて(=教科書を見ずに)言う。  教科書本文を暗唱させるのに効果的。1年生の教科書などで短い会話文の時は、2〜3文をまとめて練習させても良い。

 最後に、「Look upのままで」と指示を出し、教師が言う日本語のcue(または、目的により各英文の最初の1語でも良い)によって本文を言わせるのも効果的。

スピード読み

 教科書本文が短い場合、「1分で何回声を出して読めるか」を競わせる。各自で指を折ってカウントさせ、最後に「1回読めた人、2回、3回....7回、Great!」などとコールして挙手させる。  単調な音読練習にゲーム性が加わって活気が出る。

感情移入読み

 ある程度音読がすらすらできるようになってきたら、気持ちを込めて読ませるようにしたい。

 本文に"Oh, my cola!"などの激しい感情を表す発話が出てきたら、音読の何回目かに、「それ、全然驚いてないよ! コーラを全部こぼしたんだよ。」といった場面を自覚させる一言を投げかけてやる。

 「怒って読もう」「悲しい気持ちで読もう」「ウキウキしながら読もう」「がっかりした気持ちで読もう」など、多くのバリエーションが考えられる。

 暗唱大会などでは、Deliveryがかなり高いウェイトを占めることがあるが、英語が生きた言語として使用されている場面においては、当然のことである。

 この工夫により、教科書に書いてある文章を読むだけの単純練習が、俄然生き生きした英語使用になってくる。

■読解 Updated!

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「Akiiのいかなる質問にも答えよ」

 4〜6人ほどのグループを作り、「先生のいかなる質問にも答えられるよう、グループ毎に作戦会議をしなさい」と指示を出し、パッセージ(教科書本文など)の量に応じて5〜10分ほどの時間を与え、教室を回って歩く。

 時間経過後、グループ毎に1人ずつ指名し、パッセージについて口頭で質問し、答えさせる。1人が答えられなかったら、同じグループに順次指名していく。

 質問は、「マイクは昨日、どこに行ったのですか?」「5行目のtheyとは、誰のことですか?」という内容に関するものから、「(関係代名詞を含む英文をさして)どうしてこんな所にwhoがあるのですか?」という文法に関するものまで、あらかじめグループの数より少し多めに準備しておく。

 小規模校で3個学年の英語を1人で担当し、教材研究の時間がなくて、長文読解のためのプリントが作れなかったときの苦肉の策である。しかし、(先生がどんな質問をするか予想して作戦を立てるなど)チャレンジ性があるからか、意外に生徒たちは楽しそうに取り組んだ。

 グループで取り組むために、英語の不得意な生徒でも(得意な生徒から教えてもらうなどして)答えが準備でき、難解な英文の読解であってもきちんと授業に参加できるメリットは大きい。

■プリント Updated!

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長文読解で単に和訳を与える代わりとして

 長文を読解させる方法として、スキミング、スラッシュ読み、和訳、TorF、英語によるQ&Aなどいくつかの方法が考えられるが、時には下のような和訳の穴埋めをさせる。穴埋めをさせる部分は、(例えば「ここの構文に注目させたい」など)教師のオリジナリティが問われる部分である。

「人々を                のは、僕たちが生きていることのよい理由になるからね。」(Making people happy is a good reason for living.)

(H18 New Horizon Book 3 The Fall of Freddie, the Leafの自作プリントより)

 「訳さないと安心できない」と言って、和訳を欲しがる生徒は多い。本来は英語のままでの直読直解が理想的だが、和訳をする場合であっても、口頭では時間がもったいない。プリント作業の結果、和訳ができているのは便利である。

Q&Aや作文で語数の目安を示す

 教科書本文の読解をさせる際、Q&Aの手法を用いるときには、下の例のように何語〜何語で答えるべきかという語数の目安を示す。

As he fell, he saw the whole tree for the first time. という本文について、What did Freddie see for the first time? (3-5) のように、答えるべき英文の語数をカッコ内に示す。3語ならThe whole tree. 5語ならHe saw the whole tree. となる。

 8語とか10語とか、長い語数であるほど答えやすく(=本文から探しやすく)なるようである。

 Q&Aを解くのは、英文の内容を理解し、ある程度の作文力も要求されるため、特に書くことが不得意な生徒は意欲が減退しがち。

 語数の目安を示してあげることで、生徒たちは教科書の本文から適切な部分を指折り探し始め、下位の生徒にも有効である。この技術は、(口頭での作業ではあるが)英語検定の二次試験でも役立つ。(左の例では、Yes, he did.なら2点、The whole tree.なら3点、Freddie saw the whole tree.なら4点、He saw the whole tree.なら5点など)

■指名の工夫 Updated!

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考える時間をあげる

 「〜は英語でなんて言うと思う?」など、授業中に教師が発する質問を学級全体に問いかけた場合、全く誰も答え(られ)ない場合や、逆に上位の(または既に塾で学習した)生徒があっさり正答を言ってしまう場合がある。

 自由な発言が全くない場合、まずは教師の発問が漠然としていることが考えられる。このときは、「A. can、B. may、C. must、さあどれでしょう?」と選択肢をあげ、「Aだと思う人、Bだと思う人、Cだと思う人」と挙手させると反応しやすい雰囲気になる。また、「30秒間、隣近所で相談してみて」と投げかけると、活発なやりとりが行われ、自信を持って挙手する生徒が増える。

 逆に、どんどん発言したがる生徒(上位生徒、一部の発達障害の生徒など)が気になる場合もある。そのときは、教師が発問し終わると同時に「では30秒考えて。(30秒後)はい、わかる人は手を挙げて」として挙手させ、2〜3名を指名して答えさせる。もちろん、発言したがる生徒は、最後に指名して「それでいいか?」とチェック役をしてもらうと満足する。

 教科書の進度が気になる場合など、一部の上位生徒とのやりとりで授業を進めてしまうことがよくある。これでは、他のほとんどの生徒が、何も考えずに(=学ぶことなく)授業を受けてしまう。

 より多くの生徒が(できれば学級全員が)教師の発問にウンウン言いながら考え、必要に応じて友人と情報交換したり自分の考えの正否を確かめたりすることは、有意義な学習活動である。

 授業終わりのあいさつの後、「あー疲れた!」という声を聞くと、「一生懸命頭を使ったんだな」とうれしくなる。

指名を予約して、答えを板書させる

 授業中、生徒に課題を与え、作業させている様子を机間巡視する際、作業の進み具合をチェックしながら、正答を書いている(または多くの生徒が陥りやすい貴重なミスをしている)生徒に、作業時間終了前に自分の答えを黒板に書いてくれるよう頼む。

 この時、はじめの方の簡単な問題は下位の生徒に、後の方の難問は上位の生徒に割り当ててしまう。

 予約された生徒は、みんなの前で恥をかきたくないから「合ってますか?」と聞いてくることが多い。「合ってるから当てたんだよ」と言って安心させる。

 下位の生徒にも堂々と発言した実感を与えることができ、上位の生徒にも「難しい問題を解けた」というプライドを持たせられる。作業後に答え合わせをするときも、視覚で正確にチェックできる。

複数の生徒に当てる

 1つの質問について、1人の生徒への指名で終わらずに、3人ぐらいの生徒に同じ質問をする。3人とも同じ答えの場合は「全員正解!」と評価し、異なった答えが出てきた場合は「誰の答えが正しいと思う?」と学級全員に問い返す。

 たとえ一発で正解が出てきても、(「そうだよね」等と言いながら)喜んだ表情を見せたり決してしない。「なるほど。」「ほほぉ。」「そうきたか。」とか言いながら、平然と2人目、3人目に指名する。

 発言内容が間違っていた場合、または指名しても答えられなかった場合、できればその時間内にもう一度、名誉挽回のチャンスを与えたい。

 「誰の答えが正しいと思う?」とか、「ちょっとちがうなあ。どこがちがうと思う?」と指名された生徒の回答を生徒全員に返してやると、下位生徒を含むより多くの生徒が思考し始める。

 一発正解に飛びつかないことにより、より多くの生徒に指名できる(=授業に参加させられる)し、個々の生徒の思考時間をより長く保証することができる。

■板書

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黒板のテカリ、チョークの色の配慮

 席が教室の端の方で、前の席に座っている生徒は、光の加減で黒板がテカって文字が読みにくいことがあるので、なるべく黒板照明はつけっぱなしにし、黒板の端っこまで文字を書く際には、その生徒の近くまで行ってテカっていないかチェックする。テカっていたら、黒板に近い窓のカーテンを少し閉めるとよい。

 また、黒板の地肌が深緑の場合、赤緑色盲の生徒は赤いチョークで書かれた文字が見えにくいので、重要部分はなるべく黄色を使う。

 字の上手下手も生徒にとっては重要な要素であるが、意外に黒板のテカリに気づかない教師は多い。

 黒板の地肌が深緑の場合、赤緑色盲の生徒は、白と黄色なら見分けがつきやすい。実は私も生まれつき第1種赤緑色盲強度であるが、中高生の頃は「あの字が見えないの?」と友達に言われるのがいやで、先生に「読みにくい」と言えず苦労した。

四線黒板で復習

 1学年では四線黒板を使うことが多いと思われるが、学年1学級しかないような小規模校においては、授業のノートを四線黒板1ページに収まるようにまとめ、次の授業まで消さずに教室内に置きっぱなしにする。  重要な基本文や意味、注意点などが、いつでも1年生の目に触れられる状態で置かれている効果は大きい。生徒が教室にいる間は目につく可能性が高いからである。

 次の授業まで消さなくてすむので、教科リーダーの仕事も減るかも...。

■ALTとのティームティーチング Updated!

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シンプルな指導案

 忙しい日々の中、ALTが来校するたびにTT planを作成するのは、英語教師のみに課せられるかなり大変な作業である。

 一般的な日本語の指導案形式で作成するのが理想的だが、「何をするか」「誰がするか/生徒は何をするか」だけのTT planは、作成が容易である。

 英文による指導案作成の一番のネックは、やはり時間がかかること。要はするべき内容がALTに伝わればよい。

 私は、作成に1時間もかからないこの形式で、何年間も続いている。

ALTの存在価値

 まずは「完璧な英語を、指示によって、いつでもどんな内容でも話してくれる」こと。外国に行くことなく、高価なリスニング教材を買うことなく実現する。

 次に、学習者の英語のエラーを訂正してくれること。辞書を引いたり、ネットで検索したりすることなく、即座に正しい英語が得られる効果は大きい。

 さらに、教科書などに出てくる外国の文化について、歴史や実際の様子など生の話が聞けること。例えば、ハロウィーンの様子(E.T.など)やクリスマスの様子(Home Aloneなど)について描写された映画などを探すのは大変な作業であり、鑑賞するのにも手間と時間がかかる。

 自分で外国に行って情報をアップデートすることなく、少なくともALTが住んでいる国の生の最新情報が得られること。語彙を始めとして、文化やものの考え方などの流行がわかる。

 これらのことを「ありがたい」と言葉に表して感謝するスタンスでティームティーチングを行いたい。

 ALTが日本に来始めた頃、「外国に行かなくても生の英語を見聞きできる」と喜んだものである。それから何十年も経過し、外国人が近くにいることに慣れてしまいがちであるが、身近なところにネイティブスピーカーがいるのはやはりありがたい。

 ALTは、母国語話者だけに「なぜそう言うの?」などと聞いても理由を説明できないこともある。日本語話者は「なぜ日本語で『1匹』を『いちひき』ではなく『いっぴき』と言うの?」と聞かれたら、たいてい答えられないのと同じ。

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